「異常な古墳やな」
初めて足を踏み入れたその古墳は、寒さと静寂に包まれていた。
周囲には他の古墳が見当たらない。独立し、ヘルメットを伏せたような形をしていた。当時20歳で関西大学文学部の学生だった森岡秀人(70)はわき上がる「震え」を覚えた。
奈良盆地の南東部に位置する小さな村には田園が広がり、目立った大きな建築物はほとんどない。だがここは、万葉集に詠まれた舞台が数多く存在する、飛鳥時代の宮都だ。
日本初の本格的都城・藤原京の南部にあるこの古墳は、「高松塚」と呼ばれていた。だが、松の木は見当たらなかった。かわりに竹が密生していた。
「根が張っており、発掘は容易ではないな」
古墳と対面してから20日後、森岡の違和感は確信に変わる。
■切り石をみつけた…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル