新型コロナウイルスの集団感染があった大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号から19日、443人が下船した。
「さっき船を下りてきたんですけど、心配じゃないですか?」。埼玉県狭山市の男性(76)は、乗り込んだタクシーの運転手に問いかけた。横浜・大黒ふ頭。クルーズ船の近くに数十台がいた。「会社から注意するように言われています」。マスク姿の男性運転手は言葉少なだった。
前夜から、大勢がいる電車を使うのはよそうと決めていた。タクシーも断られるんじゃないかと思っていた。ウイルス検査の結果は陰性。「上陸後は、日常の生活に戻ることができる」と記す検疫所長名の文書ももらった。それでも気にかかる。「船にいたという事だけでも知られれば、感染するんじゃないかと白い目で見られるのでは」。手荷物を配送する業者も一時、取り扱いを拒んだ。
この2週間、船内から次々と感染者が出て、自分も、との不安から逃れられなかった。妻と2人で毎日5、6回は体温を測り、体力が衰えないように軽い運動をしてきた。
スーツケース二つを船会社に預け、リュックと紙袋二つを持ってタクシーの座席によりかかった。「これで家に帰れる」とほっとした。乗り合った別の夫婦と約3時間、話が止まらなかった。
帰宅するとまず、妻が地元の緑茶をいれてくれた。「あー、やっぱり違うね」。大きな声が出た。「やっと自宅の風呂で足を伸ばせる。しばらくは家庭菜園でもして、気分転換をしますよ」。約1カ月間、畑は放置され、白菜はすっかりしなびていた。しばらくは、散歩や買い物も極力控えようと妻と話している。(村田悟)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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