「青い空が広がり白い菊が咲き始めています。もうすぐ春ですね。お空の上で愛梨さんはお元気ですか」。東日本大震災で亡くなった幼稚園児へ、愛知県弥富市の医師山本直人さん(67)は、はがきをしたためた。10年経ったこれからも、犠牲者のことを胸に刻み、災害弱者を守るという気持ちを忘れまいと。
宛先は、2011年3月当時6歳だった佐藤愛梨さん。地震発生後、宮城県石巻市で乗せられた送迎バスは高台の幼稚園から海側へ向かい、津波と火災に巻き込まれて亡くなった。
母の美香さん(46)と同県の芸術家菅原淳一さん(56)は4年後、その現場で白いフランスギクを見つけ、摘んだ一輪を株分けし各地で増やす取り組みを続けてきた。「大人の判断一つで助かる命があった。悲劇を風化させたくない」との思いからだ。
災害拠点病院の海南病院(弥富市)で院長だった山本さんは、この活動を知って共感した。震災時、同病院の医師、看護師、薬剤師らとチームを組んで福島県いわき市に入り、避難所を診療に回った経験もある。
譲り受けた花を病院の庭園に植え、増やした花は市などの協力を得て、近隣の小中高校など約50カ所に分けた。子どもたちと植栽する際に、山本さんは震災と花のいわれを伝えた。
震災から10年のいま、山本さんが手にしたはがきは、たくさん開いた小さな穴で円が描かれ、その真ん中に「佐藤愛梨様」と書いてメッセージを添える。円の裏面はフランスギクの中心部のように黄色い。
「わが子に郵便物や届け物が来…
2種類
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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