大陸沿岸への下り坂、滑りやすい氷の斜面は「列車」編成でそりを下ろす。そりを前後の雪上車の間に置いてワイヤでつなぐ。
昭和基地を出発してから17日目の2020年10月22日。出発準備でそりをつないでいると、あたりが真っ白になる。「また地吹雪か」。停車していた場所へ戻ろうとしたが、何も見えない。数十メートルか百メートルか、いくらも離れていないはずなのに。無線で緯度・経度を聞いてやっと戻った。
「これじゃ無理だな」。出ばなをくじかれて、空気もよどむ。昼食で集まっても、皆の口数は少なく、ピリピリした感じが漂う。ささいなことにいらついてしまうのは、小さな閉鎖社会ならでは。そんな時はこう考えるようにする。「後で振り返って笑えたらいい」
天候は好転せず、再びキャンプ態勢へ。前もよく見えないままそり列をつくる。並べ終わった途端に晴れてきた。絵画のような美しい青空が広がる。地吹雪の中、気象隊員の福田裕大さんが風に向かって仁王立ちしていた。「顔が凍る」。手には風速計。朝昼夕と毎日3回、気温や風向・風速・気圧を測っている。
夕食時はなごやかな雰囲気が…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル