「知床は懐が深く、飽きることはない」自然との出会いは一期一会

 「自然を相手にするからには、油断はしてはいけない」

 北海道・知床半島で自然ガイドをする綾野雄次さん(62)はそう言う。

 知床沖で観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故から、間もなく11カ月が経とうとしていた3月21日。知床国立公園内は雪解けが徐々に進み、春の訪れを感じさせた。

 シャーベット状に溶けた雪の上を、「スノーシュー」を装着してゆっくりと進む。スノーシューとは、雪の上を歩く際に、足が雪に沈まないように靴に取り付ける道具のことだ。

 事故が起きた昨年4月23日。綾野さんは、出航後のカズワンとみられる船をガイド中に目撃した。そして、それがカズワンの最後の目撃情報となった。

 目撃した際の様子を語ってもらうため、昨年5月にも目撃地点までのツアーの同行取材をお願いした。今回は、「冬の知床の魅力を伝えたい」とリクエストし、当時とは違うルートで同じ場所を目指した。

 雪に反射する日光のまぶしさに目を細めながら、約60年前に開墾された畑跡の林を進む。凜(りん)とした空気を大きく吸い込むと、乾いた木の香りを感じる。

 冬の森は静まり返り、我々が踏み抜いた雪の音だけが響く。

 少し進むと、幹に金網やペットボトルが巻かれた木の見本があった。

 知床のエゾシカは冬になると草が無くなるため、樹皮を食べてしまう。そのまま放置すると木が枯れてしまうため、近年ではポリエチレン製のネットを巻いて木を保護しているという。

 30分ほど歩くと、一本の木を見つけた。イタヤカエデの木だ。

事故を語るのをやめた

 キツツキが樹皮に傷をつけて…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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