柏樹利弘
東京・浅草に日本最初のバーとなる神谷バーを創業し、「日本のワイン王」とも呼ばれた明治の実業家、神谷伝兵衛。晩年はふるさと愛知県三河地方の産業発展に貢献した。今年が没後100年となるのに合わせ、その功績を伝える企画展が刈谷市中央図書館で開かれている。
神谷は1856年に現在の西尾市に生まれた。ブランデーベースのカクテル「電気ブラン」で知られる神谷バーや、日本初の本格的なワイン醸造施設「シャトーカミヤ」(茨城県牛久市)を創設したことで知られる。生涯で60社もの会社を創設した。
晩年、倒産の危機にあった三河鉄道(現・名鉄三河線)の社長に就任。猿投(現豊田市)まで延伸させるとともに、ここで採れる良質な粘土を活用するため、刈谷に耐火れんが工場を設立。経営を立て直した後、1922年に66歳で死去した。
東海道線と三河鉄道が交わる交通の要衝として存在感を増した刈谷にはその後、豊田紡織や豊田自動織機製作所などが進出。自動車産業の街として発展していくことになる。
地元には、市民でつくる「傳兵衛(でんべえ)クラブ刈谷」が神谷の功績を語り継ぐ活動をしている。2年前に立ち上げたのは、神谷の歩みを研究する前副市長の川口孝嗣さん(69)。没後100年に合わせて三河鉄道の写真やワイン瓶など、ゆかりの品を集めた企画展を開く。9月25日まで。生涯をまとめた漫画も制作した。
その一環で、川口さんが18日午後2時から、市中央図書館で刈谷の発展史をテーマに講演する。「刈谷だけでなく三河の発展に大きく貢献した偉人がいたことを、地域に知ってもらいたい」と意気込む。先着100人で入場無料。問い合わせは傳兵衛クラブ刈谷(村井さん、080・6910・6911)。(柏樹利弘)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment