「禁酒令」の日々 失われたアイデア、芽生えた不平等感

 「感染対策」の名の下、飲食店がアルコールの提供自粛を求められる日々が、都市部を中心にさらに続くことになりました。事実上の「禁酒令」は、私たちの社会をどう変えるのでしょうか。

キテレツだけど秀逸な考え、酒場で生まれる

「真野鶴」5代目蔵元・尾畑留美子さん

 酒はもともと神とつながるツールでした。飲んだときの高揚感が「神様に近づく」と思わせたのでしょう。ヨーロッパで修道士がワインを造ったように、僧侶が酒を醸した時代もありました。

 神様にだって近づけるのだから、酒には人と人とをつなぐ力があります。現代に至るまで、酒場はそんな役割を担ってきました。

 けれどコロナで、酒場の灯(ひ)が消えつつあります。私たちの酒蔵がある新潟県佐渡市緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象ではありませんが、各地で多くのお祭りや行事が中止になり、会合は激減しています。あらためて思うのは、酒場が育んできたものの大切さです。

 私たちは互いに「空気感」を読んで暮らしています。ここでこんな発言をすると白けるとか、黙っている方が無難だとか、周囲の人が発する空気を意識して行動します。

 ところが酒場では、そうした空気を読む力が、良い意味で鈍感になることがあります。喫茶店で隣の席の会話に興味を持っても、話しかける人はほとんどいないでしょう。でも酒場なら許される雰囲気があります。ここに新しい出会いが生まれます。

記事後半では、アメリカ史研究者の岡本勝さんが禁酒法が生んだ「分断」について語ります。また、作家の町田康さんは自身の経験から「飲む飲まないは自分で決めること」と話します。

 酒がもたらす高揚感は、自ら…

この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

残り:3072文字/全文:3685文字

2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment