「復興五輪」を掲げる東京五輪。7月からの開催に向け、福島県内でも多くの人がボランティアなどで協力する。コロナ禍で先行きは見通せない中、不安を抱えながらも選手や観客を迎える準備を進めている。
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「一流選手を会場で観戦したい気持ちもあったけど、来た人に直接、福島のいまを伝えるボランティアとして大会に参加したい」
福島大1年生の八巻叡美(さとみ)さん(18)=福島市=はそんな思いで、観客をサポートする都市ボランティアに応募した。高校1年生の時、職員室前の棚で見つけたチラシがきっかけで知り、JR福島駅などで観客への交通や観光の案内を担う予定だ。
8歳の時、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故があった。大きな揺れや、不安な気持ちで家族と一晩過ごした避難所や、放射能への心配から自由に外で遊べなかった日々は鮮明に覚えている。
そんな時、支援物資として動物の絵が描かれた鉛筆をもらった。「名前や顔も知らない人たちが、福島を応援してくれる気持ちがうれしく、励まされた」
その後も各地で自然災害が相次ぎ、「あの時の恩返しをしたい」とボランティア参加を考えたが、年齢や体力を考えると踏み切れなかった。
その中で地元でのボランティア募集は絶好の機会だった。五輪の1年延期で受験も終えた。車いすを利用する人や、視覚や聴覚に障害がある人などの来場を想定し、声のかけ方や介助の方法も学んだ。自信をもって観光案内できるよう、友人と市内のカフェや観光地を巡り、SNSを使って日本語と英語で発信する。
「復興五輪」を担う一員として、津波の被災地を見学したり、帰還困難区域の住民から話を聞いたりもした。「『全部が復興しました』ではなく、多くの人に福島の現状を知ってもらう機会にしたい」と考えた。
だがいま、新型コロナウイルスが猛威を振るう。「私がボランティアをやりたい気持ちより、選手や観客にとって安全な大会になることのほうが大切。正直、不安でいっぱいだけど、できる限りの準備はしておきたい」と話す。(力丸祥子)
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ソフトボールと野球の競技会場になる福島市の県営あづま球場。近くに住む阿部保昭さん(77)は「福島の復興の姿と魅力を発信したい」と観客らを迎える準備を進めている。
市西支所で今月8日、マリー…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル