「あなたの話 無料で聞きます」。名古屋駅近くの路上に夜ごと、「聞き屋」の看板が立つ。
看板には「自慢・悩み・世間話・愚痴・相談・恋愛・暇潰し・道案内」とも。
痛ましい出来事の多かった2022年。路傍に座る「聞き屋」の前で、1千人が心情をはき出した。あなたなら何を話しますか。
冷え込みが強まった12月22日午後7時半すぎ、名鉄百貨店前の歩道脇。道行く人は看板を手に座る青年をちらっと見ては、雑踏に消えていく。
「聞き屋」の青年は、水野怜恩(れおん)さん。向けられる物珍しそうな視線に、「もうなれましたね」と笑う。
気温3度。ダウンやパーカを8枚重ね着し、スマホを手に待つ。
午後10時前。
「聞き屋さん、お久しぶりです」。手を振りながら現れたのは、千葉県の会社員女性(23)だ。
愛知県出身で、専門学校時代に友人と4、5回ほど話を聞いてもらった。久しぶりの帰省という。「聞き屋さんと話がしたくなって」
10分ほど談笑が続いた。
唐突に切り出した。
「仕事、辞めたいなー」
夢だった航空会社に就職して3年が経ったという。
「でも、みんないい人だから辞めるって言えない。申し訳ないし。ただ、生活のリズムが乱れて、体力がきついなって」
朝3時に起きて空港へ。経験を重ね、要人の接遇も任されるようになった。
「夢をかなえて現実が見えると、やりたいことが分からなくなっちゃった」
むかし、探偵の専門学校をめ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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