寝たきり状態の姉(84)を殺害したとして、殺人罪に問われた妹(82)の裁判員裁判で、東京地裁(高橋康明裁判長)は2日、懲役3年執行猶予5年(求刑・懲役5年)の判決を言い渡した。被告は1人で姉を介護する「老老介護」の状態で、生活保護を受給して姉を施設に預ける提案を受けていたが、「税金をもらって生きるのは他人に迷惑をかける」などと考えて受給せず殺害に至っていた。
判決によると、東京都の玉置キヌヱ被告は今年3月、姉の顔にウェットティッシュを置き手で押さえて窒息死させた。犯行時は手を握り「お姉ちゃん、ごめんね」と声をかけたという。
約60年前に福岡県から上京した姉妹は2人で暮らし、親しい親戚や知人はいなかった。姉は約5年前に介護が必要になり、約2年前から寝たきり状態に。2人の収入は1カ月あたり約10万円の年金だけだった。姉を特別養護老人施設に入れるため生活保護の受給申請をケアマネジャーから提案されても、被告は拒み、1人で介護を続けた。
生活保護を受けなかった理由について、被告は法廷や供述調書で「税金からお金をもらうのは他人のお金で生きることで迷惑をかける」「親にも、他人に迷惑をかけないように言われて育った」と説明。殺害の動機は、姉の体調が悪化し「これ以上介護できない。迷惑をかけないためには終わらせるしかない」と考えたためで、殺害後は自ら110番通報した。
検察側は論告で「自分の考えにこだわった短絡的な犯行だ」と批判したが、高橋裁判長はこの日の判決で「第三者に助けを求めることはできたが、『生活保護を受けてまで生活したくない』との考えから抜け出せず、周囲の助けを得なかった。非常に苦しく絶望的な状況での犯行で同情できる」と述べた。そのうえで、「憎悪や怒り」を理由に殺していないことなどから刑の執行を猶予した。(新屋絵理)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル