「マグマシティ」。鹿児島市が今春から、そんな市のブランドイメージを発信している。街には、噴火を繰り返す桜島の火山灰がときに容赦なく降りそそぐ。厳しい自然を逆説的にとらえ直し、郷土愛を育て、魅力を市外に広めようという試みだ。鹿児島からあなたへ、届け「桜島愛」――。
「桜島 わが前にあり 西郷も 大久保も見し 火を噴く山ぞ」。九州新幹線の終着駅、鹿児島中央駅の休憩スペース。高さ3メートルほどもある壁一面に、鹿児島出身の作家、海音寺潮五郎の名で一文が刻まれる。
桜島は、維新の偉人が活躍した時代も今も、変わらず雄々しい姿で仰ぎみる者たちを圧倒する。
過去、大噴火で多数の犠牲者も出した。「大正噴火」(1914年)の犠牲者は58人に上った。気象庁の24時間監視の下にある国内有数の活火山は市民にとって、「脅威」や「不安」と隣り合わせの存在だ。
市が今回、打ち出した「マグマシティ」というブランドは、そんな火山のイメージを、桜島のマグマが宿す「エネルギー」や「あたたかさ」といったプラスイメージに変える発想の転換だ。
「鹿児島は全て根っこで桜島とつながっています」。市の高橋卓也・広報戦略室長はそう話す。桜島を囲んで海の幸を恵む錦江湾も、わき出る温泉も、桜島大根などの特産品も。降灰予報を見て傘を持ち歩き、ふいの「ドカ灰」に「雨宿り」ならぬ「灰宿り」することも。桜島は厳しくもありやさしくもある。「言ってみれば桜島は親のような存在」と高橋室長。
市は広報戦略室を立ち上げ、約…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル