空腹にまずいものなし――。生理学研究所(愛知県岡崎市)の中島健一朗准教授(神経科学)らのグループが、空腹時に味覚を調節する神経系をマウスの脳内で発見したと発表した。空腹時に味の感じ方や好みが変わるのは知られていたが、その仕組みは明らかになっていなかったという。
研究グループは、脳の中枢にある「AgRP神経」が空腹時に活性化し、食欲をわかせる仕組みに着目した。この神経が味覚にどう影響しているかを調べるため、ヒトと味覚の感覚が近いというマウスを使用。脳の神経を光で刺激し、人工的に空腹状態にした。
ショ糖溶液を与えたところ、コーラの3分の1程度に抑えた甘味で、通常のマウスに比べて10秒間になめた回数が2倍に増加した。人工的につくった苦味でも、空腹状態のマウスのほうが通常のマウスよりなめた回数が2倍に増え、不快な味に鈍くなることがわかった。
さらに、この神経の経路をたどる実験を繰り返した結果、脳内の「外側中隔核(ちゅうかくかく)」と「外側手綱核(たづなかく)」につながる神経が、それぞれ味覚の調節役になっていることがわかったという。中隔核は不安感に、手綱核は嫌悪感にかかわる中枢神経として知られている。空腹でその働きが抑制されることで、中隔核が甘味に対する嗜好(しこう)性を上昇させ、手綱核が苦味の感受性を低下させているという。
中島准教授は「哺乳類の進化の…
980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル