新型コロナウイルスの国内の流行状況について、日本感染症学会の舘田一博理事長は19日、東京都内で始まった学会の学術講演会で「『第2波』のまっただ中にいる」と述べた。6月以降の感染者数は今春の「第1波」の2倍以上にのぼる。政府側はこの日、「第2波」とは明言しなかった。
舘田氏はあいさつで「『第1波』は緊急事態宣言の後、なんとか乗り越えられたが、いままさに『第2波』のまっただ中にいる」と語った。「『第1波』を超える感染者が確認されているが、死者は少ない状況が維持されている」とも指摘した。舘田氏は政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の構成員と、厚生労働省の助言組織のメンバーも務めている。
都道府県の発表をもとにした朝日新聞の集計では、「第1波」では3月末からの2カ月で感染者は約1万5千人。いまの「第2波」は6月末からの2カ月弱ですでに4万人弱が報告されている。19日の1日あたりの新規感染者は大阪府が187人で東京都の186人を上回った。死者は4月中旬から5月上旬は、20人以上の日を含め連日10人以上が報告された。7月は最大6人だったが、ここ数日は再び10人以上が報告される日もある。
ただ、感染者が多い主な都府県である東京や大阪、愛知、福岡、沖縄では、直近7日間平均の新規感染者は8月上旬に最も多くなった後、ここ1週間は少し減っている。お盆時期で各都府県の検査件数が少なかった可能性もある。舘田氏は「ピークを越えたようにも見える」としながらも、再上昇しないか注意が必要だと語った。
「第2波」と表現したことについて、舘田氏は取材に個人的見解だとして「大きな山。その大きさから見て、第2波ととらえるのが適切なのではないか」と話した。「ウイルスの遺伝子でみると、最初の武漢由来、欧州から来た大きなピーク、さらに少し変異した今回の波があり、第3波と呼ぶのかもしれない」とも指摘した。そのうえで「第1波や2波という呼び方にとらわれず、状況を理解してできる対策を取ることが大事だ」と強調した。
一方、政府は「第2波」と認定することをたびたび避けてきた。菅義偉官房長官は7月30日の記者会見で「第2波が訪れていると分析していないのか」と問われ、「4月の緊急事態宣言当時とは状況が異なっている」と回答。8月19日の衆院厚労委員会の閉会中審査でも、野党議員の「明確に第2波でいいか」との質問に加藤勝信厚生労働相は「必ずしも定義があるわけではない」と発言した。西村康稔経済再生相は会見で「『第2波』に定義があるわけではない。どう呼ぶかは別として大きな波であることは間違いない」と語った。そのうえで「重症化するリスクの高い方々への感染が増えてきていることは警戒しないといけない」と話した。
厚労省の12日時点の公表データによると、全国の入院者は6009人。各都道府県のデータを集計し始めた4月28日時点の5627人を超えた。ホテルなどの宿泊施設療養者と自宅療養者も、4月時点の約2倍に増えている。重症者は沖縄や大阪など8府県で前週の1・5倍以上と、8月に入って急増している。愛知や宮崎など9県も4月28日時点の重症者数を上回っている。ただ全国の重症者数は192人と4月28日の381人の約半数にとどまる。
19日の学術講演会では、多くの患者を診察している国立国際医療研究センターの忽那(くつな)賢志・国際感染症対策室医長が現在の治療法を解説。国が2種類を新型コロナの治療薬として診療の手引に掲載、データが蓄積されつつあることから、「有効性がある薬がまったく使えなかった第1波よりいまの方が、重症化を防げている症例が多い印象がある」と話した。(野口憲太、山本知弘、富田洸平)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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