日本独自の数学「和算」を絵馬などに描き、寺社に奉納した算額。岐阜県養老町高田の田代神社宮司、大橋裕幸さん(62)が自社に奉納された算額を解説する冊子を作った。原文(漢文)と読み下し文、現代語訳だけでなく、現代数学で解いた解説、英訳までつけた。
田代神社には1841(天保12)年に納められた算額が残る。正方形の1辺の長さを使って同じ面積の円の直径を表す問題など、幾何学5問。うち3問は10代前半の少年が作ったものとされ、末尾に大垣の和算家、谷幽斎の名が謹閲者として、刻まれている。
完成した冊子「田代神社の算額 江戸和算文化の真髄(しんずい)を伝える」は2部構成になっている。前半では額の内容の説明に、額に登場する谷幽斎や、出題した少年たちの解説を加えた。
数学を娯楽として楽しむ文化
ただ、算額には問題と解答しかなく、解法は記されていない。そこで、後半には可児市在住の和算研究者、深川英俊さん(80)らに現代数学の手法で解いてもらい、分析と解説をつけた。
「自作の問題を自慢しあって、見た人も感心しながら解いてみる。算額は、当時のSNSだった」と深川さんは言う。「大学がなかった時代に、地域にこれだけ高度な数学があった。数学を娯楽として楽しむ文化。教え子に考えさせる教育。この算額から学ぶことは多い」と話す。
和算は近年、海外でも注目されており、深川さんの解説には英訳も添えた。英訳は、高校で英語を教えていた大橋さんのこだわりで、自身も英文で「DO try!」と呼びかけた。
多くの専門家に多角的な分析を依頼したため、完成には2年かかった。大橋さんは「歴史的な解説も、数学的な分析もつけた。幅広い人に知ってもらいたい」と話す。
冊子は、A4判55ページ。1部500円(税込み、送料別)。問い合わせは同神社(hirohasi@wh.commufa.jp
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment