「精子という“モノ”から生まれた」感覚に苦しみ…ドナー提供で出生した女性が『出自を知る権利』を求める理由(ハフポスト日本版)

「子どもの出自を知る権利は、後回しなのか」ーー。 夫婦以外の第三者から精子や卵子の提供を受けて、人工授精や体外受精などによって子を授かる。こうした「第三者を介する生殖補助医療」で生まれた子の親子関係を定める民法特例法案をめぐり、精子提供によって生まれた人などから不安の声が上がっている。特例法案は、与野党が16日にも参院に共同提出し、今国会で成立する見通しだ。何が問題になっているのか?

パズルのピース、空白のまま

「母親と、“モノ”である精子によって自分が生まれている感じがすごく嫌で。そこにちゃんと人がいた、と感じたい。だから私は一度でいいからドナーに会いたい」 東京都の石塚幸子さんが、父親と血がつながっていないと知ったのは23歳のころ。石塚さんの母親が、遺伝性疾患のある父からの遺伝を心配して悩んでいた石塚さんに対し、大学病院で他人から精子の提供を受けて石塚さんを産んだこと、提供者(ドナー)は誰か分からないことを告げた。 成人するまで親から真実を隠され続けたことに加え、ドナーを特定できないことで、石塚さんはさらに苦しんだ。 「今まで信じてきたことやアイデンティティーが崩れた時、それをもう一度立て直すには、自分を形づくるパズルのピースを埋めていくことが必要。ドナーの情報がわからなければ、パズルは空白のままで再構築できないのです」

どんな法案?

現行の民法は、ドナーを介する生殖補助医療によって生まれた子の親子関係について規定がない。そのため、子の法的地位が不安定で、訴訟トラブルに発展するなどの問題が指摘されていた。 今回の法案は、夫婦以外の第三者を介する生殖補助医療の提供に関して、基本理念や国の責務などを定める。ドナーから提供を受けたことで生まれた子の親子関係については、次のように規定している。 ・女性が、自分以外の女性から卵子の提供を受け、子どもを妊娠・出産した場合は、出産した女性を子どもの「母」とする ・妻が夫の同意を得て、夫以外の精子の提供を受けて出産した場合、夫はその子が嫡出であることを否認できない 一方で、法案はドナーに関する情報の保管や、ドナー情報の子どもへの開示手続きについては定めず、「おおむね2年をめどに検討」との記載にとどまる。第三者を介する生殖補助医療を受けられる人やドナーになることができる人の要件、ドナーと生まれた子の法的関係などについても規定がない。 この附則に対し、石塚さんは「順番がおかしいのでは」と首を傾げる。 「ドナーを介した生殖補助医療に法的なお墨付きを与えるのであれば、出自を知る権利を保障する制度の運用や、ドナーの要件などについての議論も同時に進めるべきです。2年の間にも、技術を使って生まれる子どもたちがいる。(出自を知る権利を)『認めるか否か』の検討から始めていては遅いのです」

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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