猛烈な風と長期の停電で千葉県に大きな被害をもたらした台風15号(房総半島台風)の到来から、9日で1年になる。宿泊業者らは相次いだ台風に復興を阻まれ、コロナ禍でさらなる苦しみを負う。被害の集中した房総半島南部では修理が進まず、今もブルーシートを屋根に張った家で暮らす人たちがいる。
「廃業が頭をよぎるほど追い込まれている」
千葉県南房総市千倉(ちくら)町の民宿「政右エ門(まさえもん)」を営む堀江洋一さん(53)は、消毒液と検温器を部屋ごとに置いた宿で、肩を落とす。
太平洋に面した港町に民宿を構えて51年目。新鮮で大ぶりな黒アワビや伊勢エビを使った料理が魅力で、宿泊客は絶えなかった。それが、あの日、一変した。
昨年9月9日未明。強風の轟音(ごうおん)と屋根に打ち付ける雨音で眠れずにいると、停電し、水は出なくなった。電話もつながらない。客はいなかったが、天井から雨水が漏れ、バケツを持って走り回った。屋根や壁ははがれ、横なぐりの雨が全7部屋に吹き込んだ。
拡大する新型コロナ感染防止のため調理場を消毒し、客を迎える準備をする堀江洋一さん=2020年9月6日、千葉県南房総市、川村直子撮影
畳は105枚すべてを廃棄。停電と断水は4日間続き、水槽や冷蔵庫の海産物は腐った。9月下旬に営業を再開したが、10月に台風19号と、21号に伴う大雨に相次いで襲われた。
屋根を覆ったブルーシートは飛び、窓ガラスは割れた。裏の水路があふれ、土間まで水が押し寄せた。約2カ月間、客はゼロ。被害額は約2千万円に上った。
コロナ直撃、宿泊キャンセル次々 廃業考える民宿も
南房総市の観光協会長も務める堀江さんは11月から、仲間と「がんばろう南房総」と題したキャンペーンを展開。旅館や道の駅で使えるクーポンや復興イベントなどで客を呼び込み、12月の売り上げは普段の8割まで回復した。
しかし、年が明けるとコロナ禍…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル