村上春樹氏の小説「羊をめぐる冒険」の舞台とそっくりな場所が、北海道美深(びふか)町にある。羊、白樺(しらかば)林と放牧地に囲まれたペンション。現地を訪ねると、羊をめぐる実話の物語があった。
北海道中川郡美深(びふか)町。
自衛隊の街・旭川と、サハリンと対峙(たいじ)する最北の地・稚内のちょうど真ん中にある人口4千人弱の町だ。
西は天塩山地、東は北見山地に囲まれる。
1、2月の平均気温がマイナス8度を下回る酷寒の地でもある。
町の中央を貫くように流れる1級河川・天塩川に、南からの町の入り口あたりで東から合流するペンケニウプ川がある。
このペンケニウプ川を上流にさかのぼること約25キロ。白樺(しらかば)の森林道を上っていくと突然、放牧地が開ける。
アイヌ語で「森林」を意味するニウプを地名とする美深町仁宇布(ニウプ)地区だ。
「そりゃびっくりしたよ。まるで自分のことが書いてあるって」
仁宇布で羊牧場とペンションを営む柳生佳樹さん(74)は、村上春樹氏の小説「羊をめぐる冒険」を初めて読んだとき、そう驚いた。
「羊をめぐる冒険」は198…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル