河崎優子、荒ちひろ
昨年末に大好きな兄を失った。今も思い出すとすぐに涙が出る。それでも、兄が勧めてくれたカヌーを続け、初めてのパラリンピックの大舞台で全力でパドルをこいだ。
難民選手団のカヌー選手、アナス・ハリファ(28)はシリア生まれ。17歳のときに内戦が始まり、家族と離ればなれになった。数年間は国内の避難民キャンプにいたが、最後はドイツに行き着いた。
「人生終わった」から「翼が生えた」へ
2018年、仕事で太陽光パネルを設置している最中に屋根から転落した。脊髄(せきずい)を損傷し、下半身が不自由になった。「人生が終わったと思った」
リハビリのためにカヌーを始めたが、ハリファは終始暗い表情だった。コーチはハリファを笑わせようと「さぁ、パラリンピックの練習を始めるよ」と明るく声をかけた。シリアに残っていた6歳上の兄も「後ろを振り向かず、前に向かって進め」と背中を押してくれた。
最初はうまくバランスが取れ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル