2019年11月、佐世保商工会議所の金子卓也会頭(77)は就任の記者会見でこう切り出した。 【写真】艦船のカレーの味を競う「GC1グランプリ」は佐世保市内外の客でにぎわった 「佐世保は海軍鎮守府ができて生まれ、基地との共存共栄で大きくなった街。基地経済がもたらす恩恵をさらに享受したい」 佐世保経済で基地の比重は大きい。市によると、海上自衛隊佐世保地方総監部と陸上自衛隊相浦駐屯地の18年度歳出額は計957億円。これに米海軍佐世保基地の支出額を加えると、市の一般会計とほぼ同規模と推計される。
「基地があることによって、国や米国から巨額のキャッシュフロー(現金の流れ)がある。使わない手はない」(金子会頭)。商議所は基地予算の受け皿拡大に力を入れる。 艦船の修理や物資調達の地元受注率を年間40%以上(金額ベース)とする目標を立て、19年2月に防衛省に要望した。海自の場合、15年度から19年度までの年間発注額は194億~413億円。この間、市内企業の受注額は69億~157億円で、受注率は27~58%の幅がある。
この数字をどうやって高めるか。経済団体でつくる佐世保地域経済活性化推進協議会は、防衛関連企業が集積する「基地経済クラスター」の構想を描く。商議所は「佐世保で技術者が育つようにしたい」と語る。 近年、基地は観光面でも佐世保を潤す。艦船を擬人化した女性キャラクターが登場するオンラインゲーム「艦隊これくしょん」。関連イベントの参加者は18年が2日間で9500人、19年は4日間で2万5千人に増えた。艦船が港に並び、防空壕(ごう)を生かした市場がある佐世保は、ファンに「聖地」と呼ばれている。
艦船で作るカレーの1番人気を投票で決める「GC1グランプリ」、艦船などのカレーを飲食店で提供する「させぼ自衛隊グルメ」にも、市外からファンが押し寄せた。米軍関係者が集う「外国人バー」は観光スポットとして紹介される。 佐世保を拠点に活動する自衛隊員は陸海合わせて7千人以上。米軍の軍人や軍属、家族は7千人余り。人口減少が続く市内で「一定の人数を維持し、所得が安定した基地関係者と家族は消費経済に貢献している」(地場企業役員)という側面もある。 基地依存を強める佐世保経済。それは、かつての造船や炭鉱のような産業が育たなかったことと表裏一体でもある。 佐世保市で米軍基地の監視活動を続ける篠崎正人さん(73)は「基地を経済活性化に生かす考えを否定はしない。ただ、基地がどんな産業を生み出し、地域にどれほどの影響力を与えるのか。将来展望を示すことが大事だ」と地元経済界に注文を付ける。
◇ 佐世保港は「葉港(ようこう)」と呼ばれる。ヤツデに似た形状だから、「葉」の字を崩すと「サ」「世」「ホ」になるから、と諸説ある。この港の軌跡を通して佐世保の戦後をつづる。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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