東京五輪の聖火ランナー募集開始が近づいた6月のある日、宮城県石巻市の会社員鈴木典行さん(54)は、ふと思いついた。
「聖火が大川小のそばを走らないのなら、自分が行って走ろう。真衣と、子どもたちと、一緒に」
2011年2月27日、鈴木さんがコーチを務めるバスケットボールチーム「大川ウィングス」は、市内の小学生の大会に出場した。試合後の記念写真に笑顔で写る大川小6年の次女真衣さん(当時12)の指にはテーピング。1試合目の途中で突き指をしたからだ。
「緊張感もなくプレーしてっから突き指なんてすんだ。いでのが?」。鈴木さんが強く言うと、真衣さんは泣きながら「痛くない」と言った。試合に戻る娘に、鈴木さんは檄(げき)を飛ばした。「泣いでる場合でねー。がんばれ!」
鈴木さんは当初、まったくのバスケ初心者だった。本を読んだり、ほかのチームのコーチに教わったりしてルールや練習方法を覚えた。平日の週3日は仕事を終えて夜の練習に駆けつけ、週末は試合の日々。コートの中で子どもたちと走りまわった。
同年3月11日。東日本大震災が起きた。
鈴木さんがやっとの思いで学校…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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