「聴く本」で健康づくり TARAKOさんは「もものかんづめ」朗読

 声優やナレーターたちの本の朗読を聞きながら体を動かし、健康づくりを進める。そんな取り組みを軸にした連携協定を、オーディオブックを手がける「オトバンク」(本社・東京)と大阪府柏原市が結んだ。市は今後、観光や子育て支援など幅広く活用していく。

 オーディオブックは、声優らが朗読する「聴く本」のこと。目の病気などで文字が読めなくなった人が楽しんだり、電車などでの移動中に聴いたりできる。子どもから目を離せない育児中や家事をしているときも、耳で読書ができる。

 オトバンクの配信サービス「audiobook.jp」は現在、1万5千点を超える作品を聴くことができ、書籍ラインアップは国内トップ。会員数は250万人を超えている。

 オトバンクを2004年に起業した上田渉会長は子どものころ、読書が大好きだった祖父が緑内障で失明し、元気を失う姿を目の当たりにした。東京大に進学し、ある交流会で年配の人たちが「目がよく見えない」「老眼がひどい」とこぼしていたのを見て、亡くなった祖父を思い出した。

 当時、オーディオブックが欧米で普及し始めていた。これを日本でも、と大学を中退し、起業した。

 オトバンクは18年から、柏原市の関西福祉科学大学と健康に関する共同研究をしてきた。オーディオブックを聴きながら運動すると脳の血流がよくなることが確認されたとして、認知症の学会でも発表されたという。

 6月29日、柏原市内で上田会長と冨宅正浩市長が協定書を交わした。地域づくりや市民サービスを進める包括連携協定で、まずは9月末、オーディオブックを聴きながらウォーキングをする「耳活ウォーキング」のイベントを開く。「耳活フィットネス」のイベントも計画中という。

 上田会長は「日本中の健康増進のお役に立ちたい。柏原市との提携は、その第一歩です」。冨宅市長は「『オーディオブックシティ柏原』として、幅広く連携していく」と語った。

 締結式には、声優のTARAKOさんとタレントの森尾由美さんが出席した。

 TARAKOさんは、アニメ「ちびまる子ちゃん」のまる子役で知られる。故さくらももこさんのエッセー「もものかんづめ」など2作品を朗読、オーディオブックにしている。

 アニメの収録は、絵に合わせてしゃべる。オーディオブックは、聴く人たちを想像しながらしゃべる。そんな違いがあるという。

 「私が出演したさくらさんの作品を聴いていただくと、みなさんの耳のところにヤツがいます」

 ヤツとは、もちろん、まる子のことである。

 「最近、目が疲れて読書が続かないんです」と話す森尾さんは、移動時間にオーディオブックを愛用している。最寄り駅まで行こうと歩きながら聴いていたら、朗読のリズムが心地よくて、次の駅まで歩いていたこともあるとか。

 「小説を聴いていると、草原の表現では風を、食べ物の表現ではにおいを、感じる。想像の世界が広がります」と話していた。(編集委員・中島隆)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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