今年度もあと約3カ月で本格的な受験シーズンが始まる。多くの浪人生を志望大学に送り出してきた代々木ゼミナールの荻野暢也講師(59)に、浪人生をめぐる環境の変化や、受験を迎える浪人生へのメッセージを聞いた。
東京理科大を卒業後、山梨県内の私立高校の教諭を経て、1989年に代ゼミの数学講師となりました。原点には、私自身が実際に代ゼミで送った1年間の浪人生活があります。
当時は1クラスに300人もいて、大教室の席を取るのも大変でした。後ろの座席の生徒はオペラグラスをのぞきつつ板書をするほど。早めに到着するため、自宅から朝の満員電車で1時間かけ、東京都渋谷区の校舎に通っていました。勉強前から毎朝ヘトヘトでした。
東京大向けのコースに通っていたのですが、途中で国語は挫折。数学と英語のみ受講していましたが、まともについていけたのは数学のみでした。
その数学が面白かった。講師の方々が、高校では見たことがない解法を教えてくれるんです。「こんなエレガントな解き方があるんだ」と感動し、数学に携わっていきたいと感じました。
講師となって30年以上。浪人生は年々減少し、授業のスタイルも変わってきました。大教室での、講師から生徒へのいわゆる「一方通行」の授業から、小さめの教室で生徒一人ひとりに向き合える環境になりました。そのためなのか、2000年代前半までは多かった、派手な服装や話し方で大勢の生徒を引きつける、いわゆる「カリスマ講師」も最近は減ってきました。
現場で働く中で、浪人生が減る二つの要因を感じています。
一つ目は「学歴の価値低下」…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル