岡山県津山市で9日に2歳児の孫が車内に置き去りにされて死亡し、祖母が過失致死容疑で逮捕された事件。孫を保育園に送り届けるはずだったが、県警の調べに祖母は「考え事をしていて、孫を乗せているのを忘れた」と供述。保育園側は登園していないことに気づいていたが、家族に連絡していなかった。全国各地で置き去りが起きるなか、事故防止に取り組む団体は「ヒューマンエラーは誰にでも起こりうる」と指摘。貴重品を子どもの近くに置いておくことや、マイカーへの安全装置の設置を呼びかける。
新潟市では昨年5月、1歳5カ月の男児が車内に放置され、熱中症の疑いで死亡した。父親が出勤の際に保育園に送り忘れ、車に置いたまま出勤していたという。
今年8月には北九州市の大型商業施設の駐車場で0歳男児が車内に放置され死亡。両親は互いに相手が男児を連れていると思い込み、結果的に置き去りにしてしまったという。
なぜ、同様の事故は後を絶たないのか。ドライバーを対象にした意識調査からは、置き去り事故自体は認識しているものの、8割近くが特に対策をとらず「自分は大丈夫」と過信している姿が浮かび上がる。
自動車部品などを扱う三洋貿易(東京)は5~6月、小学生以下の子どもを乗せて車を運転するドライバー3377人を対象に、オンラインで子どもの車内置き去りに関する実態調査を行った。
ドライバーの91・6%が子どもを車内放置したことで熱中症になる事案が発生していることを「知っている」と回答した。一方で「1年以内に子どもを残したまま車を離れたことがある」と回答したのは20・4%にも上った。このうちの1・9%は子どもを残していることさえ認識していなかった。
子どもを残して車を離れたことがある人のうち、5・1%が子どもにめまいや顔のほてり、頭痛や吐き気などの症状が出た、と答えた。
子どもだけが車内に残される理由(複数回答可)について「保護者の意識が低いから」が最も多く60・5%。「他のことに気を取られて子どもが車内に居ることを忘れてしまうから」は22・3%あり、5人に1人以上が選んだ。
今回の事故で、逮捕された祖母は、県警の調べに孫を乗せているのを失念したと説明しているが、意識調査からは決して特異な例ではないことが分かる。
無意識に車内に子どもを残さないような対策(複数回答可)について、78・9%が特に対策をしたことはないと回答した。
亡くなった2歳児が通っていた保育園によると、9日は土曜日のため園児約80人のうち、登園していた園児は平日の3分の1程度だった。園側は2歳児が登園していないことには気づいていたが、家族に電話などで確認していなかった。
園長は「思い込みもあって連絡していなかった。確認していれば、大切な命がなくならなくて済んだと思う」とチェック不足を認めた。保育園は10日夜、緊急の保護者説明会を開き、電話確認していなかったことなどを謝罪したという。
再発防止策として、保育園は連絡がなく園児が登園しなかった場合、必ず電話で確認することや、登園を知らせるアプリの導入などを挙げている。
今回の事件を受け、津山市は10日から市内の保育園や幼稚園などに園児の出欠確認の実施状況を緊急調査。市こども保育課によると、亡くなった2歳児を預かっていた保育園とは別の園で一部の園児しか出欠確認をしていなかったことがわかり、市は出欠確認の徹底を求めた。
子どもの事故予防に取り組むNPO法人「Safe Kids Japan(セーフキッズジャパン)」(東京)は、子どもが後部座席に座る場合、近くに財布やスマホ、バッグなどの貴重品を置いておく対策を提案する。
北村光司理事は「置き去り事故は世界共通の課題。欧州では新車の安全性を評価する項目に置き去り検知機能を追加する動きがあると聞く」と話す。「人の注意力には限界があるので、安全装置をマイカーにも取り付けるなど技術でカバーする組み合わせが必要では」と指摘している。(上山崎雅泰、礒部修作)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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