相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人の障害者が刺殺された事件は、7月26日で6年を迎えた。「障害者は不幸しかつくることができない」と語った植松聖(さとし)死刑囚による凶行は、社会が抱えるさまざまな課題を浮き彫りにした。私たちはこの課題とどう向き合えばいいのか。事件当時、追悼集会を開き、その後も発信を続けている東京大学先端科学技術研究センター准教授で小児科医の熊谷晋一郎さん(45)に聞いた。
――事件当時、「時計の針を巻き戻すことなく、すべての人のいのちと尊厳が守られる未来を」と呼びかけ追悼集会を開きました。生産性や能力が高い人には生きる価値があるという、いわば優生思想を超える「未来」に近づいているでしょうか。
事件で衝撃を受けたのは、私も含めた障害のある人たちがこの半世紀、主張してきた「生産性や能力の有無は人の価値とは無関係」という価値観を根こそぎひっくり返されたことでした。
時計の針が巻き戻ったようで、私自身、街に出るのが怖くなり、体調を崩すほどでした。
障害者を不幸を生み出す存在ととらえ、蛮行を正当化する植松死刑囚の論理は間違っていることを、伝え続けています。理解してくれる人は多く、意味はあったと思います。
一方で、果たしてどれだけ効果があっただろうか、とも思います。
経済合理性を重視する社会において、競争は激化し、みんなに余裕がなくなり、序列化が進んでいます。多くの人が、いつ「価値がない」と言われるかと苦しんでいます。
この6年間、植松死刑囚の考え方の背景にある「優生思想」と地続きにある社会の状況は、改善していないと思います。
――なぜでしょうか。
背景には、身近で対等な仲間…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル