自衛隊に名簿を提供するのは憲法などに違反するとして、奈良市の高校生(18)が29日、同市と国を相手取り、慰謝料などを求める国家賠償請求訴訟を奈良地裁に起こした。原告弁護団によると、この問題で個人情報が提供された当事者が原告となる訴訟が提起されるのは、初めてという。
訴状によると、奈良市役所は昨年2月、高校生を含む計6419人の氏名、生年月日、性別、住所の個人情報含んだ名簿を自衛隊に提供し、自衛隊は高校生の住所に自衛官募集の案内を郵便はがきで送った。これらの行為は、プライバシー権を保障した憲法13条や個人情報保護法などに違反しているとして、精神的な苦痛を負った慰謝料など計約110万円の支払いを求めている。奈良市には情報提供を望まない人は拒否できるとする「除外制度」が設けられているが、「通知が極めて不十分」であることや、憲法19条が保障する思想・良心の自由を侵害するとして、違法であると主張している。
高校生は「自分の個人情報が自衛隊に本人の承諾もなく渡っていることがすごくおかしいと思った。はがきが届いたことは怖い」とコメントを出し、仲川げん奈良市長は「訴状が届いていないのでコメントできません」とした。(仙道洸)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル