北海道・知床半島沖で観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故について、15日に公表された国の運輸安全委員会の報告書は、事故に至ったメカニズムと船内の様子を明らかにした。
報告書では、船長や乗客が、同業者や親族と交わしたやりとりの詳細が新たに明らかになった。
4月23日午前10時ごろ、子ども2人を含む乗客24人と船長、甲板員1人を乗せたカズワンがウトロ漁港を出航。海岸線に沿って遊覧していた。
午前11時半ごろ、僚船のカズスリーが帰港。カズワンの乗船を手伝った人は、カズスリー船長から「だいぶ風が出てきた」と聞き、心配になった。
この人が、午前11時47分ごろから午後0時47分ごろにかけ、カズワン船長の携帯電話に3回連絡したが、つながらなかった。カズワンは知床岬を7分遅れで折り返し、復路を航行しているころ。船の速度は往路に比べて大幅に落ちていた。
午後1時2分ごろ、乗客の一人は親族と携帯電話で「下船後に昼食を食べる」と会話を交わしていた。慌てている様子はなかったという。
ただこの時、船の速度はさらに落ちていた。
乗船を手伝った人から、船長と連絡がとれないと聞いた同業者は、自身の事務所からアマチュア無線でカズワンを呼び出した。
船長から応答があったのは午後1時7分ごろ。「カシュニ(の滝)です。ちょっとスピードが出ないので、戻る時間、結構かかりそうです」と連絡があった。
この時、波の高さは約2メートルと推定され、航行が困難だった可能性がある。予定より約1時間の遅れが生じていた。
同業者がそのまま無線を聞いていると、慌ただしい声が突然聞こえてきた。
「浸水している」…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル