自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑をきっかけに改めて浮上した「政治とカネ」の問題。「草の根」選挙を訴え、「改革派」と呼ばれた橋本大二郎・元高知県知事(76)も、「カネ」にまつわる苦い経験があります。兄の故・龍太郎元首相についても聞きました。
――今回の裏金疑惑をどう見ていますか。
「政治とカネ」というときには二通りの意味があると思います。一つは、選挙に勝つための日常の政治活動にかかるお金について。事務所を構え、人を雇い、光熱費やチラシの印刷代もかかるというようなことです。
もう一つは、政権与党を続ける自民党内の権力闘争の中で、地位を得るのに必要なお金という意味です。派閥は会員を増やしたい。会員としては、政治資金のパーティー券を売るという形で派閥に貢献し、政務官なり副大臣、大臣の地位を得たい。
田中角栄さんは「政治は数、数は力、力は金」と言いました。今回の問題で言われているカネとは、まさにこの論理で動いている後者のお金だと思います。
ある派閥の議員秘書として、企業にパーティー券を売っていた方に個人的に話を聞きました。実績のある議員になると、企業側が購入の枠を持っているそうです。議員側からすると、パーティー券をさらに買ってほしいが、担当者からは「枠を超えての購入は、社内で説明がつかない」というようなことを言われる、と。
そうすると、この議員が派閥内で評価を得ようと思えば、個人のパーティー券の販売分を削り、代わりに派閥のパーティー券を買ってもらおうとする。議員側へのキックバック(還流)については、そうした事情を派閥側もわかっているから存在している仕組みではないかと、その方は推測していました。
バック分は政治資金収支報告書に記載していなかったといわれています。そうすると、表に出さずに使えるようになるということです。たとえば、選挙のときに人を集めることができる地方議員の政治団体に自分の政治団体からお金を送る。制度上問題のないことですが、人に見られてうれしいものではないでしょう。
「草の根」の足元でカネの疑惑
――橋本さんは1991年に高知県知事になりました。当時、「草の根」選挙の象徴といわれました。
僕は、選挙で応援してもらう…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル