親からの虐待、ネグレクト、経済的困窮――。様々な理由で、実の家族と暮らせなくなった子どもたちがいる。そういう子どもを守り育てる場所も、私たちの生活のすぐ隣にある。その一つ、愛媛県松山市内にある児童養護施設の現場を取材した。
恐竜の手足をバラバラにして…
子どもたちが生活する施設の一角に、ボードゲームやぬいぐるみ、パズルやビーズが並ぶカラフルな部屋がある。入り口には「セラピー室」の看板。臨床心理士の女性職員(28)には、ここで見た忘れられない光景がある。
今年4月。小学5年の男の子がやってきて、普段は見向きもしない部屋の奥に向かった。砂が入った木箱に小さなおもちゃや人形を置き、自由に遊ぶことを通して行う心理療法「箱庭療法」のための部屋だ。
男の子は、棚からミニチュアの火山を取り出し、箱庭に置いた。おもちゃの恐竜を手にすると、臨床心理士の目の前でおもむろに恐竜の手足をバラバラに分解し、火口に投げ込み始めた。
「この恐竜は死んだの」。「葬式」なのだと、ぽつりと話した。
男の子は、母親からの身体的…
この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。
残り:1378文字/全文:1836文字
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル