能登半島地震の影響で、金沢市内に生徒が集団避難することになった石川県珠洲市立宝立(ほうりゅう)小中学校。21日朝、「出発式」が開かれた。
地面の割れたコンビニの駐車場に、中学生5人が集まった。冷たい雨が肩をぬらす。
「みんな、不安なことがいっぱいあるよね」
時兼秀充校長(60)は、かたい表情の生徒たちに語りかけた。
避難所になった校舎は、大勢の被災者が身を寄せている。学校は10日、空いた教室で自主学習を始めた。22日から授業を再開するが、断水が続き、水道やトイレは仮設のまま。通学路のがれきも片付いていない。中学生23人のうち9人が集団避難を決めた。
「行っておいで」
同中2年の谷内大翔(ひろと)さん(14)の母・加奈子さん(44)は、集団避難の意向調査が始まってすぐ伝えた。一家は損傷した自宅で暮らし、断水が続く。勉強に集中するのも難しい環境だと考えた。
当初、大翔さんは「行きたくない」。家族から離れての生活をためらった。だが数日後、「行こうかな」と口にした。友達と話し、先生から「帰りたくなったらいつでも帰ってきていいんだぞ」と言われ、決めた。
出発前日、荷物を準備する大翔さんは寂しそうなそぶりを見せた。2匹の愛猫の寝顔を毎日LINEで送るよう加奈子さんに頼んだ。
「本当はみんな一緒にここで過ごさせてあげたい」。肩をたたいて生徒を見送った時兼校長は言う。「またみんなが教室に戻れるように少しずつ前に進んでいきます」
能登町立能都中1年の宮下匠磨さん(12)も、集団避難への参加を決めた。発災以降は家にこもりきり。友達ともあまり会えていない。避難先では部活も少しできると聞き、友達と相談して参加を決めた。
金沢市内に向かうバスを見送った母由里重さん(49)は「仕事のある父親だけが残り、母親らと転校した子もいる。決断しなきゃ前に進めない」と話した。
一方、能登町立松波中学校3年の治部結珠華さん(15)は、集団避難には参加しない。3月には高校入試を控え、環境を変えたくなかったからだ。同級生たちも参加しないと聞き、「あまり迷わなかった」。4人きょうだいの長女で、弟たちの面倒をみることも理由の一つだという。(太田原奈都乃、堅島敢太郎、伊藤智章)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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