川嶋かえ
静岡県熱海市で7月に起きた土石流で、起点にあった盛り土について、県と市が2009年12月の協議で「行政責任を問われかねない」として崩壊防止対策の必要性を指摘していたことが、公開された行政文書でわかった。同年1月や11月の協議の文書にも、土砂の流出や崩壊を心配する内容が記載されていた。
県、年内にも第三者調査委を設置
県と市は18日の会見で、住民に被害が及ぶ可能性を10年10月に把握したと説明していた。県と市は今後、行政文書をもとに職員への聞き取りを実施。年内にも県が設置する第三者調査委員会が行政対応の不備などを検証し、年度内に報告書をまとめるという。
盛り土は神奈川県の不動産業者が07年に市に計画書を提出して以降、土砂搬入を続けて違法に増大させていた。
行政文書によると、県と市は09年1月の会議で「(盛り土の)土砂流出を心配している」と指摘。同年11月の会議では、現場視察をふまえた県土木事務所が雨が降れば土砂が崩壊する、と危惧していた。
さらに同年12月、業者と連絡が取りづらくなったことをふまえ、「土砂の崩落や流出により何かあったとき、行政として責任を問われかねない」として、対策の必要性が指摘された。行政が費用を肩代わりして防災策を講じる「行政代執行」を提案する意見もあった。
県と市はその後、防災工事の実施▽工事着手まで土砂搬入はさせない――などの行政指導を業者に繰り返したが、改善はみられなかったという。
県と市は11年に危険性の認識をさらに強め、同年6月、行政指導ではなく行政処分を検討。安全対策を講じるよう命じる「措置命令」を業者に発出する意思決定をしたが、業者側が工事を始めたことで命令が見送られたことが判明している。(川嶋かえ)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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