「見せしめ」と訴えたコロナ禍の時短命令 裁判所はどう判断したか

 コロナ対策で飲食店の営業を規制するのは「営業の自由」を定めた憲法に違反しないのか――。こうした点が初めて本格的に争われた裁判で、東京地裁は16日、都側に憲法違反や賠償責任はないと判断した一方で、命令を出したことは違法と認めました。「飲食店ばかり悪者にされている」という不満もくすぶる中、感染防止と営業の自由のバランスはどうとればよいのでしょうか。慶応義塾大学の大林啓吾教授(憲法)に聞きました。

 ――「営業の自由」とはどんな権利ですか。

 憲法22条1項は職業選択の自由を保障しています。これは単に職業を選ぶことができるだけではなく、営業する行為の自由まで保護していると考えられています。

 ただ「公共の福祉に反しない限り」という条件があり、様々な理由で制約を受けることがあります。特に経済的な活動は社会生活に大きな影響を与えることもあり、営業の自由には強い制約が課されやすい側面があります。このため、過度な制約ではないか、裁判所が厳しくチェックすることが求められます。

 実際に違憲と判断されたこともあります。代表的な例は薬局の距離制限です。最高裁は1975年、薬局を開設するには既存の薬局から一定の距離をあけなければならないとしていた薬事法の規定について、営業の自由を侵害しており、憲法違反だと判断しました。

 ――自治体はコロナ対応の改正特別措置法に基づいて、飲食店に休業などを要請してきました。憲法が定める「営業の自由」を侵害しているのでしょうか。

「公益」と権利の制限について、実際の裁判の論点に沿って更にみていくほか、過去の過ちや未来への備えについても考えます。

営業制限は憲法に違反するのか

 新型コロナの蔓延(まんえん)を防ぐために特措法に基づいて休業や時短の要請を行うこと自体は正当な目的で、「公共の福祉」に合致するといえるでしょう。

 規制の方法を見ても、重点措…

この記事は有料会員記事です。残り2228文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment