夏の参院選を前に、安倍晋三首相を追及する「見せ場」を作りたい野党が重い腰を上げ、約1年ぶりの党首討論の開催が決まった。ただ、首相を質問攻めにできる予算委員会を優先したい野党側の意向などにより、党首討論を月1回開催するとした与野党合意は全く守られていない。近年は本来の趣旨である党首同士の骨太の政策論争とはほど遠い討論も目立ち、形骸化しつつある。
党首討論は、二大政党の党首が政権交代をかけて論戦する英国議会のクエスチョンタイムがモデルで、平成12年に始まった。26年5月には自民党や旧民主党など与野党7党が月1回の開催を申し合わせた。だが、12年に8回だった開催数は、25年以降は1~2回の年が続く。29年はゼロで、30年は2回にすぎない。
ここ数年、与党が開催を打診しても野党が応じないケースが多い。党首討論は首相と野党党首が45分間、対等の立場で討論する。一方、予算委の集中審議であれば学校法人「森友学園」「加計学園」問題など野党側が取り上げたいテーマに絞り、最大7時間程度追及できる。
今国会も金融庁金融審議会の報告書などを予算委で追及したい考えだったが、与党が応じず、見せ場を完全に失う恐れから野党が妥協した。野党が細分化した現状では党首1人あたりの持ち時間が短く、論戦が盛り上がりにくい。昨年6月の党首討論では野党第一党の立憲民主党の枝野幸男代表でさえ15分だった。
しかも枝野氏は約7分間にわたり森友・加計問題などの論点を延々と列挙し、充実した討論にならなかった。「党首討論という制度はほとんど歴史的意味は終えた」という枝野氏の主張を自ら実践した。討論時間延長など見直しに向けた与野党協議も始まった。現行制度に課題はあるが、開催を怠ってもよい理由にはならない。(田中一世)
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース