聞き手・中島鉄郎
この4月、捲土(けんど)重来をめざし、気持ちを新たにする大学受験浪人生も多いだろう。かつて浪人は「一浪(人並み)」と言うほど、大学進学へのステップとして普通だった。だが、浪人の割合が減り続けて久しい。このままいくと、「標準」から「少数」へ、そして「絶滅寸前」になる日も来かねないのか。その背景について、日本のエリート選抜方法や学歴主義の特徴を長く調べてきた京都大学名誉教授の竹内洋さんに聞いた。(聞き手・中島鉄郎)
――大学への入学者の過半数が浪人生だった時代がありました。
「1961年の話ですが、私も1年浪人して京都大学に入りました。当時、入学者の中の浪人の割合は難関大学では7割前後でした。1浪は『ひとなみ』で、標準的なこと、ノーマルだったのです。『1浪が普通』とみんなが思えば、浪人への抵抗感はなくなります。今でも難関大学や医学部などの難関学部では、浪人しても普通と思う人が多いから、浪人の割合はけっこう高いままですね」
――浪人はかつて「標準」だったのに、いまなぜ減っているのでしょうか。
「18歳人口の減少に加え、推薦や総合型などの入試方法の拡大によるところが大きいでしょう。これらの入試方法には、現役で入学できるお得感がもれなくついているわけですから。また、いったん浪人率が減り出すと、それ自体が同調圧力となり浪人減少に拍車をかける面があります」
「ただ私は、浪人の減少を、日本の社会構造の変化からも考えられると思っています」
――どういうことでしょうか。
埋め込まれた「リターンマッチ」
「日本の受験競争で特徴的だ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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