「語り継ぐ火、消える」危機感 戦争知らない世代らが被爆体験朗読会

 広島、長崎に原爆が投下されてからまもなく78年。街が壊滅し無数の命が奪われたあの日を語れる被爆者は減り続けている。被爆地で目にした光景を、体験した恐ろしさを、どう将来に語り継いでいくか。試行錯誤が続く。

 「忘れてはならない真実があります」

 福岡市中央区の繁華街・天神にある福岡市赤煉瓦(れんが)文化館で4月にあった朗読会は、この一節で始まった。

 「お父ちゃん、助けて」

 「黒こげの死体がごろごろしていて、この世の地獄です」

 30~80代の男女10人の読み手は、一行一行を目で追い、息を大きく吸い、体を前後に寄らしながら言葉を紡いでいく。その姿を、正面に座った被爆者らが見つめていた。

 10人は、被爆者の体験記を朗読する「おり鶴の声」のメンバー。会社員や主婦らで今年1月に結成した。それぞれが仕事や家事の合間を見て練習を重ねてきたが、全体で練習できたのは4回だけ。この日が、初めてのお披露目だった。

 福岡ではこれまで40年以上にわたり、「福岡市原爆被害者の会」の被爆者や被爆2世らが小中学校などでその体験を語り、被爆に関する講話をしてきた。だが、こうした活動ができる人は年々減っている。証言を続けてきた被爆者の松本隆さん(88)は「継承の形を考えていかないと、語り継ぐ火は、あと数年で消える」と危機感を募らせる。

 戦争を体験していない世代が被爆の恐ろしさを継承できるように。そんな思いから、これまで被爆者らを支えてきた人たちが立ち上げたのが「おり鶴の声」だった。この日の参加者10人のうち、被爆者は1人だけ。あとは、戦争さえ知らない世代がほとんどだ。

 朗読したメンバーで最も若い…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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