「誰か気づいて止めてくれると」25歳下になりすました女の一問一答

 25歳年下の架空の妹の戸籍を作ったとして有印私文書偽造・同行使などの罪に問われている吉野千鶴被告(73)=東京都大田区=が3月、朝日新聞の取材に応じた。事件後、メディアの取材に応じるのは初めてという。

3時間、事件の経緯を語る

 吉野被告は、自宅近くの喫茶店にカジュアルな服装で現れた。約3時間にわたり、よどみなく事件の経緯を語った。主なやりとりは次の通り。

 ――架空の戸籍を作ったきっかけは。

 2021年夏、2年ほど勤めた警備の仕事を辞めて、自宅でぼーっと過ごしていた。ふと、戸籍ってどうやって作るのだろうと思って、スマートフォンで検索し、そこで就籍を知った。

 ――なぜ妹の戸籍にしたのか。

 子どもの時、妹がほしいと思っていた。中学の頃から40代くらいまで、大阪の実家で祖母の世話をしていた。きょうだいもいなかったので、相談できる妹がいればと考えていた。

 昔読んだ小説も影響したかもしれない。戸籍のない男が二つの国で二重生活を送る話だった。最初は「もしかして戸籍ってとれる?」くらいの気持ちだった。

 ――架空の妹の「岩田樹亜(じゅあ)」の設定は誰が考えたのか。

 自分で考えた。姓は旧姓で、名は樹木が好きなので。誕生日は、15年ほど前に死んだ愛猫「マービー」の命日を選んだ。

 ――警視庁によると、夫は「妻は若く見られたいと言っていた」と供述した。

 若く見られたいからではない。あまり高齢だと「今までなぜ戸籍を作らなかったのか」と疑問を持たれるし、若すぎれば母親の年齢から考えて不自然。ちょうど良い年齢が45歳だった。

 ――どのように手続きをしたのか。

 無料の法律相談窓口に電話して、弁護士に妹の戸籍を作りたいと相談した。母親が亡くなったのをきっかけに戸籍を調べたら、妹が無戸籍だとわかったことにした。

 ――うそは見破られなかったのか。

 弁護士に「次は妹さんが来て下さい」と言われたので、自分が樹亜になりきって行ったが、気づかれなかった。マスクはしていたが、しゃべり方や服装、髪形などは変えなかった。あれ、これでいけてしまうんだ、と思った。それからは姉と妹、それぞれの設定で交互に行った。

 ――夫は架空の戸籍を作ろうとしていることを知っていたのか。

 夫は同行してくれたが初めは知らなかった。途中から察したようで、「とどまることも考えた方がいいよ」と言われた。でも、ここまで来たらもう戻れない。誰かが気づいて止めてくれるだろうと考えていた。

 ――戸籍の可否を判断する裁判所とはどのようなやり取りをしたのか。

「ずっと心臓がバクバクしていた」

 この時も姉と妹それぞれの立…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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