仙台市の中心部から車を走らせること約2時間。小高い山に囲まれた宮城県丸森町筆甫(ひっぽ)地区に着く。
1人で暮らす阿部司さん(88)は今年の夏に突然、体が動かなくなってしまった。足が上がらず車にも乗れない。救急車に運ばれ入院した。栄養不足などによる貧血だった。
「ババ(妻)が死んでから、食事はどうでもよくなってしまった。作るのも食べるのもめんどくさい」。阿部さんは振り返る。
31日の衆院選投票日、人々は何を託そうとしているのでしょうか。私たちの現在地を写真でお伝えします。
今年5月に妻が亡くなるまでの8年間、リウマチで思うように動けない妻に代わり料理を作った。自慢の一品は、自分で育てた野菜の炒めもの。畑がイノシシや猿に荒らされても、妻を思い野菜を作り続けた。
「『栄養をつけさせたい、元気にさせたい』とあんなにがんばってたのに。最近では、あまり食べていないみたいで」と心配するのは、近くに住む民生委員の引地輝子さん(71)だ。
地区では一人暮らしの高齢者の「食生活」が厳しさを増しているという。缶詰やカップラーメンだけで食事を済ます人も目につく。「ここにはコンビニも無いからお総菜を気軽に買うこともできないんですよ」
そんな高齢者を自分たちの手で支えることができないか――。危機感を抱いた引地さんたち地区の住民から、今年3月、地域住民による「お弁当宅配サービス」のアイデアが生まれた。
65歳以上の一人暮らしや高齢の夫婦世帯で希望する人に、週一回、地区の婦人会などボランティアが弁当を作り届ける計画だ。丸森町からの補助金も活用し、来年4月からの開始を目指して地区の代表者が話し合いを続けている。
しかし、壁もある。
記事の後半では、地域に横たわる慢性的な課題とどう向き合ってきたのか。 筆甫地区の「自治」に迫ります。
高齢化が進む集落で、「担い…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル