芸能人が政権を批判すると「仕事を干される覚悟」となる日本。堂々と政治に物申すハリウッド俳優を引き合いに出してうらやむ人も多いが、表現の自由を掲げる米国も60~70年前は、干されるどころか刑務所行きだった。トランプ時代の今、冷戦下の「赤狩り」で多用された「非米(Un-American)」という言葉が米国で再び飛び交い、日本では安倍首相が国会で野党議員に「共産党」とヤジを飛ばす。そんな現代に、かつて追放の憂き目に遭った102歳の元俳優マーシャ・ハントさんが、スタジオからの脅し、番組の立ち消えに加え、自宅爆破の危険にも直面した経験を語り、警鐘を鳴らした。
共産党員とみなされた「ハリウッド・テン」、証言拒み有罪
Marsha Hunt 1917年、米シカゴ生まれ。ニューヨークで演劇学校に通い、モデルに。30年代半ばごろ、パラマウント・ピクチャーズに見いだされてハリウッドに移り、35年に映画デビュー。「高慢と偏見」(40年)などに出演、グレゴリー・ペックやジョン・ウェインらとも共演。「ジョニーは戦場へ行った」(71年)では主役ジョーの母を演じた
第2次大戦後、米国の資本主義陣営と旧ソ連の共産陣営との冷戦が勃発すると、共産主義者とみられた人たちが米国で次々と糾弾された。「赤狩り」だ。
ハリウッドは、映画を通じた左派思想の浸透を恐れた当局の標的に。1947年、脚本家や監督10人「ハリウッド・テン」が下院非米活動調査委員会に召喚された。共産党員かどうか聞かれた10人は憲法修正1条の表現や思想・信条の自由を盾に証言を拒み、議会侮辱罪で有罪となった。
彼らを支援し抗議するため「カサブランカ」(42年)などで知られる俳優ハンフリー・ボガートや、ローレン・バコール、ダニー・ケイ、ジェーン・ワイアットらがワシントンへ向かった。ハントさんもその1人だった。「米国旗に敬意を表す愛国者として、信念をもって抗議に行きました。正しい側に立ち、自分の信じるものを信じ、権利を守ろうとしたんです」
「高慢と偏見」(40年)などに出演、44年には映画関係者が選ぶ「明日のスター」にランク入りし、米誌ライフの表紙も飾ったハントさんは当時、米映画俳優組合の役員でもあった。
「反共リスト」に名前、突如消えたテレビ出演
役員就任まもない45年には、…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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