目覚まし時計の音で目を覚ますと、外はまだ暗い。決まった方向に向かって礼拝する時間だ。そして、父のことを思う――。
大阪に暮らす女性(32)は、そんな生活を始めて1年以上経つ。イスラム教に改宗してからだ。
両親はある新興宗教の熱心な信者だった。「道場」と呼ばれる施設で出会って結婚したらしい。
「お参りをしなさい。罰が当たる」。これが父の口癖だった。
小学生だったある日、足にけがをして帰った。すると母は言った。
「ご先祖が怒っているのよ。神様に謝りなさい」
なんで私が悪いの――。
貧乏な家庭で、夫婦仲も良くなかった。
父は小さなことですぐ怒鳴る人だった。部屋が汚いと、母に向かって怒鳴り散らしていた。
「幸せを求めて信仰するはずなのに、うちの家庭は全然幸せじゃない」
幼心に、そう感じた。
手放した金色のお守り 本気で死ぬことを覚悟した
中学生になり、ダンスを始めた。踊っている時は全てを忘れられる。ダンスの専門学校に通い、仕事にしたいと思った。
もっと自由に生きたい。宗教が自分にとって足かせだと気づいた。
信仰の証しとして、金色のお…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル