東京電力福島第一原発の処理水の海への放出が始まってから、約1カ月半が経った。国内の風評被害が見られなかった一方で、中国が日本産の水産物の全面禁輸の措置をとったことで、波紋が広がっている。12年前の東日本大震災時に大きな風評被害を受けた千葉県内の関係者らも、長期的な影響に気をもむ。
日本一の水揚げ量を誇る銚子市では、今月から解禁された底引き網漁のナマコの今季の水揚げを見送った。富津漁協も例年12月から始まる漁を今季は取りやめる。県内のナマコ漁は銚子と富津で行われており、2021年には合計55トンが水揚げされたが、ほとんどが輸出向け。富津漁協では「中国の輸入禁止がなくならないと、輸出先がないため」(担当者)と今回の判断の理由を説明する。
輸出品として人気のアワビでも、「値崩れ」が起きた。県内のアワビの約半分が水揚げされる東安房漁業協同組合(南房総市)によると、漁期後半(7月1日~9月15日)のクロアワビの平均単価は、前半(5月1日~6月30日)に比べ約4割下がった。週によっては半額以下に落ちたときもあった。アカアワビも漁期後半の平均単価は前半の約8割にとどまった。
同漁協の鈴木仁志参事は「乾燥アワビは中華料理での需要が高い。香港や中国の規制強化により値段が下がったのでは」とみる。今年のアワビ漁は9月15日で終わったが、「来年以降の操業を不安視する声もある。国にはしっかりと対応してほしい」と念を押す。
処理水放出による県内漁業関…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル