指紋やDNA型などのデータは、いつまで警察で保管されるべきか――。初めてとみられる司法判断が示された。
18日の名古屋地裁判決は、無罪が確定した男性のデータ抹消を国に命じ、抹消についての現在の運用を「あいまいと言わざるをえない」と指摘した。
「(逮捕された2016年)10月7日以前の私に戻していただくという意味では非常によい判決だった」
原告の奥田恭正さん(65)は、判決後に開かれた報告集会で、晴れ晴れとした表情で語った。
「びっくりした。すべて却下されるかと思っていた」とも明かした。
18年2月に無罪判決を勝ち取った後も続いた奥田さんの思いが、データの抹消を求める訴訟を起こすきっかけになった。「逮捕前の私に戻してほしい」。無罪が確定してもデータは破棄されず、「犯罪者予備軍扱い」だと感じた。
逮捕後は誰かに後をつけられているという感覚に襲われ、無罪判決後に出かけた海外旅行では、飛行機で隣の席になった人を「刑事ではないか」と疑った。落ち着かない気持ちが続いていたといい、この日の判決を受け、「ようやく『犯罪者じゃないよ』と言ってもらえた」と話した。
集会には、事件の発端となったマンション建設反対運動や、ほかの住民運動の当事者らも参加した。
岐阜県大垣市の風力発電施設建設をめぐって同県警が反対住民らの情報を業者に漏らしていたなどとして、住民が国や県に損害賠償を求めている訴訟の関係者は、「監視されたくない。私たちは犯罪者じゃない」と訴えた。
一方、判決を受け、警察庁は朝日新聞の取材に「判決内容を精査して、今後の対応について検討して参りたい」とコメントした。
警察庁は、DNA型などのデータについて、無罪が確定しても一律に抹消はせず、「個別のケースごとに判断している」と説明。捜査上の観点などから「保管する必要性がなくなったかどうか」を判断しており、無罪確定後に抹消した例もあるとしている。ある幹部は「判決を受けて今の運用を変えることは現時点では考えていない」と話す。
指紋やDNA型などのデータの抹消や採取などをめぐる訴訟は、警察庁が把握しているところでは、これまで7件の判決が確定、いずれも国が勝訴している。
国は2020年末現在、容疑…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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