結婚しても別姓を選べる社会を求めた人たちの声は、またも届かなかった。夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定を「合憲」とした23日の最高裁大法廷決定に、失望が広がった。
「すごく期待して、婚姻届を書いてきたのに……」
今回、夫婦別姓での婚姻届の受理を申し立てた東京都の40代女性は、最高裁の決定書を受け取った後の会見に、婚姻届を持って臨んだ。違憲判断が出れば役所に提出しようと夫と相談して準備し、婚姻後の名字の欄には「夫」「妻」の両方にチェックを入れた。
互いを尊重し、それぞれの姓を名乗りたいと事実婚を選んだが、結果は2015年の最高裁判決と変わらなかった。女性は「裁判所は個人の権利に真摯(しんし)に向き合わない」と声を詰まらせた。
夫婦には小学生の子どもがいる。会見に同席した夫は「子どもたちに選択肢を作るのが私たちの役割。裁判で時代を変えられると思ったが、あと何年かかるのだろうか」と憤った。
もう1組の申立人の40代夫婦は昨年、新型コロナウイルスに対応する緊急事態宣言が出た際、やむなく同姓での婚姻届を用意した。もし感染して重篤な症状になっても、医療行為に対する家族の同意書が事実婚では有効とされない不安があった。そんな心配をしなくていい結果を期待したが、かなわなかった。妻は「いろんな家族の形を認めてほしい」と訴えた。
弁護団は、女性の就業率の上昇、夫婦別姓を容認する人が増えたことを示す様々な世論調査などを、何度も書面で最高裁に提出。「社会や国民意識の変化、国際社会における日本の異様さをしっかり把握してほしい」と求めてきた。1980年代半ばから活動に関わる榊原富士子・弁護団長は「世論は変わっているのに残念だ。国会が動くと信じている」と話した。
同種の訴えは全国的に広がっている。ソフトウェア会社「サイボウズ」の青野慶久社長が原告となった訴訟も、一、二審で敗訴して最高裁に係属中だ。妻の名字に変えた青野社長は仕事では旧姓の「青野」を使うが、「旧姓の通称使用は余計なコストがかかり、生産性を下げる」と語った。一方で「裁判があるたびに世論が動くことに意味がある」と強調した。
「結論を出すことを押し付け合う司法と立法」
市民団体「選択的夫婦別姓・…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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