広島市は29日、新型コロナウイルスの検査で陽性と判明したものの熱やせきなどの症状がない人について、感染症の専門家から「無症状の人から他者に感染する可能性は極めて低い」との見解を得たとして、現時点で濃厚接触者の有無を調べない考えを示した。だが、市の対応に対し、専門家からは異論が出ている。「無症状でも感染リスクはゼロじゃない」「無症状の人からの感染を恐れて外出自粛を要請している東京都などの呼び掛けと反する」など戸惑いが広がる。
広島県内のある医師は「広島市が濃厚接触者を調べないという根拠が分からない。リスクのある人が野放しになれば、県民に不安が広がる。政府の専門家会議の方針とも明らかに異なる」と疑問を投げ掛ける。
専門家会議は「無症状か症状の軽い人が、本人は気付かずに感染を広めてしまう事例が多い」という見解を出している。別の県内の専門医は「だからこそ、無症状の人に不要不急の外出自粛を求める自治体がある。広島市の対応は、自粛要請と矛盾する」とする。
広島市内の内科医は、集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から東京都内の自衛隊中央病院に搬送された感染者のうち、無症状者の54%に肺の異常があったとする論文を基に「感染する可能性がある。市の判断は論外」と断じた。
一方、「無症状なら他人に感染させるリスクは極めて低い」という見方が専門家には一定にある。医師で元仙台検疫所所長の岩崎恵美子さんは「本当に無症状なら濃厚接触者の追跡は必要ないのではないか」と指摘。ただ、本人が無症状と言っても嗅覚の異常や喉の違和感など何らかの症状が出ている可能性もあり「症状があれば一定の感染力がある。本当に無症状なのか見極めが要る」と話す。
広島市の阪谷幸春・保健医療担当局長は「国は濃厚接触者の調査は個別に判断するよう指示している。今後必要があれば調査や検査をする」としている。
中国新聞社
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