新型コロナウイルスの感染拡大を受け、首都圏の複数の大学病院などで、医療従事者用のマスクや化学防護服など感染症対策に不可欠な装備品が大幅に不足していることが12日、医師らの証言で分かった。都には防護服約170万枚の備蓄があるが、それでも都内のある大学病院では独自に調達する分も含めて「供給が追いついていない」という。医療関係者は「医療従事者への2次感染は避けられない状況だ」と訴えている。
「死に物狂いで働いている」。首都圏のある大学病院で診察する医師は、感染症対策に必要な化学防護服が不足する状況についてこう語る。最低限の防御も難しい状況の中、自身が感染すれば、隔離される。ほかの医療従事者への負担が大きく増し、患者に迷惑をかけてしまうことを懸念する。日本救急医学会と日本臨床救急医学会も9日、防護具について「圧倒的に不足している。患者への対応が極めて困難」との声明を出し、危機感を強めている。
世界保健機関(WHO)は3月下旬、世界的流行で防護具などが不足していると指摘。感染者が急増した日本も例外ではない。院内感染が発生した場合、医療崩壊につながりかねず、医療関係者は政府や自治体などに装備品の早期配布を求めている。
医師らが着用する化学防護服は飛まつ感染などを防ぐために全身を覆う形で使用する。ウイルスの侵入を防ぐ特殊な不織布で、使い捨てとなる消耗品。中国からの輸入が多く、世界的な感染拡大を受け、ある大学病院では注文しても届かない状況が続いている。そのため、医師らは供給不足に対応するマスクなどの防護具を「必要最低限の交換」にとどめているという。
政府は陽性かどうかを調べるPCR検査数を拡大する方針を示しているが、難しいとの声がある。患者の受け入れ数が急増した神奈川県内の大学病院では、医療従事者が足りないため「1日数件が限度」という。
各自治体は独自に化学防護服を備蓄しており、医療機関や保健所などに配布していく方針。大阪府は9日、マスク、防護服、フェースシールドの「備蓄はゼロ」と発表。その後、独自に確保したとしているが、ほかの自治体でも今後、不足する可能性がある。
今後も防護具が不足したまま、診療する「決死の戦い」が続く。院内感染も続発しており、都内の病院では医師が感染し、集中治療室(ICU)で治療しているという。「1日24時間では間に合わない」、「消耗戦かつ持久戦。兵たんの確保なしに、士気の維持は難しい」―。最前線で奮闘する医師からは悲痛な声が上がった。(久保 阿礼)
報知新聞社
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