森直由
引退した神姫バス(兵庫県姫路市)の路線バスを、どこでも本格的なサウナが楽しめる移動型の「サウナバス」に生まれ変わらせる取り組みが、姫路市内の工場で進んでいる。年内に完成させ、来年2月のサービス開始を目指している。
発案したのは、2015年に神姫バスに入社した松原安理佐さん(28)。古くなったバスはグループ会社に売却し地方路線などで使うことが多かったが、人口減少やコロナ禍で乗客の減少に歯止めがかからないなか、新たな収入源を生み出せないかと考えた。外国でサウナ付きの車があることを知り、昨年夏にサウナバスを思いついたという。
今年5月には、同社から出向起業をする形で、新たなバス事業の企画会社「リバース」を1人で立ち上げた。02年から今年3月まで路線バスとして使われて引退したバス1台を、神姫バスのグループ会社「神姫商工」(姫路市)の工場に移し、10月から、同社などの従業員5人ほどでバスの改造を始めた。
バスの名前は略して「サバス」。前面や側面の行き先には「蒸37」「サウナ」などと表示する。バスの広さは幅約2メートル、長さ約10メートル。後方の「サウナ室」(約10平方メートル)と、前方の「休憩室兼事務室」(同)の2部屋に分ける。
サウナ室には最大9人が入ることができ、本格的な薪ストーブを置く。つり革を残し、座席の配置も工夫して、路線バスの雰囲気を生かす。室内の「降車ボタン」を押すと、高温に熱された石に水がかかり、蒸気を発生させる「通称・蒸気降りますボタン」といった演出も検討している。
休憩室兼事務室でも、つり革や座席を再利用。席に座ってサウナに入る前後に休んだり、荷物を置いたりできる。
安全に考慮して、走行中にサウナの利用はできないため、道路を走行中に乗れるのは運転手のみ。サウナ客は駐車したバスに「乗車」する。想定しているサービスの形は、宿泊・温浴施設や企業向けのバスの貸し出しだ。例えば、夏の海水浴場や冬のスキー場、アウトドア施設などにバスを移動させ、駐車したバスの中で、水着を着てサウナを楽しめる仕組みを考えている。
松原さんは「バスの新しい活用方法の可能性を、全国へPRしたい。ほかにも『託児所バス』や『シャワーバス』『店舗型バス』なども展開して、地域活性化や災害支援など、社会課題の解決にも貢献できたら」と話している。(森直由)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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