「雨なのに…」声聞いた40分後 留学直前、絶たれた21歳の夢

 世界で活躍するジャーナリストになる――。そんな夢を抱き、米国留学を2日後に控えていた上智大4年の小林順子さん(当時21)が25年前の9月9日、東京都葛飾区の自宅で殺害された。警視庁は、重要未解決事件の一つとして捜査を続けている。母親は「事件がなければどんな人生を送っていたか。想像するだけでつらい」と嘆く。

 中学から英語が得意で、高校は専門コースのある学校に進んだ。猛勉強で第1志望の上智大に現役合格し、授業やサークルで英語力に磨きをかけた。学内の交換留学制度の選考を突破し、1996年9月から米シアトル大に留学することが決まっていた。国際的なジャーナリストになるという夢も見つけていた。

 出発まで2週間に迫った8月末、順子さんは荷造りに追われていた。衣類や勉強道具、尊敬するジャーナリスト筑紫哲也さんの本、中島みゆきさんのカセットテープ、即席みそ汁……。出し入れを繰り返し、段ボール3箱にまとめた。

 母幸子さん(75)はその数日後、玄関で順子さんの髪を切った。美容学校を出た幸子さんがずっと続けてきたことだった。娘の旅立ちを前に、この日は緩くパーマをあてた。

 外ではしっかり者のイメージを持たれていた。サークルでは中心的な存在で、後輩への面倒見もよかったと聞いていた。ただ、家では違った。大学生になっても幸子さんに「髪を結んで」とねだる甘えん坊だった。留学を楽しみにする姿を見ながら、「ちょっとは大人になって帰ってくるかしら」と考えていた。

幸せの絶頂、家族の食卓で

 出発4日前の9月7日夜。父…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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