新屋絵理
ハンセン病とされる男性が事実上非公開の「特別法廷」で裁かれ、無罪を訴えながら死刑となった「菊池事件」について、男性の弁護団が、再審請求の活動費を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。特別法廷での審理は昨年に熊本地裁が違憲と判断しており、弁護団は「憲法違反の裁判の結果を是正したい」と訴えている。
当時29歳の男性は、村職員宅にダイナマイトを投げ込んだとして1952年に有罪判決を受けた後、ハンセン病療養所の菊池恵楓園(熊本県合志市)の拘置所から脱走。脱走中にこの職員を殺害したとされる罪で、隔離された園内の特別法廷で死刑判決が確定し、62年に執行された。
熊本地裁は2020年、この事件に関する国家賠償請求訴訟の判決で、特別法廷での審理は法の下の平等を定めた憲法14条などに違反すると判断。さらに裁判の公開原則に違反する疑いも指摘したが、刑事裁判の事実認定には「影響を及ぼすとはいえない」とした。
前例のない再審請求 弁護団「みなさんの支援を」
これを受け弁護団は再審請求を検討。請求権のある男性の遺族がハンセン病への差別を心配して請求に慎重だったことなどから、昨年11月、支援者ら1205人が同地裁に再審を求めた。ただ、支援者は再審を求める権利がないため、「誰でも損害の救済などを請願できる」とする憲法16条を根拠にした前例のない請求となっている。
弁護団長の徳田靖之弁護士は「再審へのハードルは高いが、多くの人に事件を知って支援してほしい」と話している。
CFは11月26日までに500万円を目標にする。詳細はCFサイト「READYFOR」(https://readyfor.jp/projects/kkch)。(新屋絵理)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル