72年の歴史を持つ定期航路も、猛威を振るう新型コロナウイルスの前にひとたまりもなかった。三重県志摩市の浜島航路。住民の足として長年使われ、急激に過疎化が進んでからは、風光明媚(ふうこうめいび)な英虞湾を巡る観光需要にかろうじて支えられてきた。だが、最近は乗客が1人もいない日も珍しくなく、ついに9月末で廃止されることになった。
波の静かな英虞湾の青い海を1隻の船が進んでいく。両側に真珠の養殖いかだ、その向こうには点在するリゾートホテルが見える。浜島航路の定期船「おおさき」。80人乗りの船だが、5月中旬のある日、客は誰も乗っていなかった。
午前9時10分、定刻通りに目的地の浜島港(志摩市浜島町)に着いた。乗る客も降りる客もいない。船長の宮本祐介さん(37)は10分前、対岸の御座港で受け取った1個の段ボール箱を下ろした。
生鮮食料品店を営む柴原隆晴…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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