球磨川3市町村、行動計画生かせず
記録的豪雨で甚大な被害が出た球磨川流域の自治体のうち、熊本県球磨村、人吉市、八代市は防災意識が高く、ゲリラ豪雨時に自治体が取るべき行動を時系列で事前に定めた「タイムライン」(TL)を県内で先行導入した先進地だった。それでも「想定外の雨量」に対応できず、早期に避難情報を出した球磨村でも多くの人が犠牲になった。発生から11日で1週間。自治体の対応だけでなく、住民の危機意識をどう高めるか、課題を突き付けている。 【上空ルポ】豪雨の爪痕、今なお生々しく…熊本の今 「注意は必要だが、球磨川は氾濫しないだろう」。3日午後4時、雨に備え、TLを導入する3市村のテレビ会議に参加した八代市の中武裕厳危機管理監は、気象庁側の説明を聞いてそう思ったという。翌4日午後6時までの県内の24時間降水量は、最大200ミリと予想されていた。
異変を感じたのは日付が変わってから。4日午前3時22分、球磨川の水位がTLで定めた基準値を超えた。市役所鏡支所で警戒していた中武さんは、自衛隊や消防と連絡を取り合い、防災無線での注意呼び掛けを職員に指示した。 午前3時39分、市内で1時間120ミリの猛烈な雨が観測され、記録的短時間大雨情報が出た。「なんで雨雲が通り抜けないんだ」。インターネットで雨雲の動きを注視していた中武さんは、周囲にこぼした。 午前4時50分、気象庁から最大級の警戒を呼び掛ける大雨特別警報が出される。その頃には球磨川の水位が増え、1時間で1メートル上昇した。暗い時間帯のため避難情報を出せず、TLで定めた通りに職員を動かすことはできなかった。
「4カ所冠水しました」「土砂崩れが2カ所発生」。次々と報告が入る中、午前6時40分、回線が雨の影響で切断され、ネットが突然使えなくなった。「テレビの情報しかなく、頭が真っ白になりました」。避難指示を出せたのは午前9時50分のこと。「雨の予測は本当に難しい。3日の夕方に避難所を開設していれば…」。中武さんは自らの判断を悔やむ。 球磨川が氾濫し始めたのは午前5時55分。八代市内では6人が亡くなり、2人が行方不明になった。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース