理化学研究所の研究者雇い止め問題で、来年3月末に雇い止めになると通達されている60代の研究チームリーダーの男性が「雇い止めは違法」として、理研に対し、地位確認や損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こし、28日、会見した。
男性は、2011年4月に理研に採用され、それ以降、1年の有期契約の更新を繰り返してきた。採用時は契約更新の上限は設定されていなかったが、理研は16年、「10年を超える契約はしない」と就業規則を変更。13年4月にさかのぼって適応するとしたため、男性は来年3月末の雇い止めの対象になっている。
就業規則変更の背景には、研究者の場合、有期雇用の期間が10年を超すと、無期雇用への切りかえを求められるというルールができたことがある。
男性側は、就業規則の変更は、不利益変更であり、無期転換を阻止するための脱法手段で法的な合理性をもたない、と主張。さらに、男性は研究所側から研究機材などを撤去するようにせかされており、研究室閉鎖に向けた手続きで、すでに研究どころではない状況になっているという。研究を妨害されたとして、110万円の損害賠償も求めている。
男性は会見で「研究力の低下につながる雇い止めをなんとか阻止したい」と訴えた。
理研は「訴状が届いていないため、コメントは差し控える」としている。
労組によると、来年3月末に10年を迎え、雇い止めの対象になる研究者が203人いると理研側は説明しているという。中には研究チームリーダーも含まれており、42の研究チームが廃止になることで技術職員など177人も行き場を失う。
なお、理研は26日、労働組合の雇い止め撤回要求に対し、「上限を10年とする現行の制度はプロジェクト期間との整合が難しいなどの意見があった」として「通算上限の制度は撤廃する」との回答書を送った。理研によると、規程の改正は来年4月施行を予定している。(藤波優)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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