九州最大の繁華街、中洲の朝。ひんやりとした空気に、白い息が漏れる。
中洲沿いを流れる那珂川に向かって、めいっぱい叫ぶ。
「どうも、バリカタめんたいZ(ズ)です!」
30メートル先の対岸の通行人がこちらを振り向くが、「まり凜(りん)」こと平川景子さん(68)はお構いなしだ。
相方の「いしづち君」こと岩口元樹さん(47)と2人で、お笑いのネタの練習を何度も繰り返す。
近くにある吉本興業の芸人養成所(NSC)に通っていた1年間。土日の朝に中洲で練習するのが日課だった。
竹刀を使ったコントの練習では、通行人から怪しい目でみられた。
でも、気にしない。むしろ元気よく「バリカタめんたいZです、よろしくお願いします!」とあいさつした。
そのうち、2人の顔を覚える通行人も出てきた。
コンビを組んでもうすぐ1年。いまは週に3回は3~4時間ほど稽古して、時折、舞台や営業で漫才を披露する。
「ネタをつくる時間が楽しい」というまり凜さん。芸人の道に進んだのは2年前、66歳のときだ。
30歳代と40歳代でそれぞれ離婚を経験し、男女3人を一人で育ててきた。
NSCの同期は、そんな自分の子どもたちより年下の若者ばかり。まわりからみれば、ちょっと浮いているかもしれない。
生き方決めた救急車内の5分、巡り合ったお笑いの道
それでも、まり凜さんにとって、心から笑わせたい人がいた。
その人に元気になってもらう…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル